翻訳ミステリー大賞授賞式&コンベンションに参加して(その4)

分科会では読書会とフランスミステリのお部屋におじゃましました。

読書会の課題はこれ。

生還 (角川文庫)

生還 (角川文庫)

アビゲイル(アビー)が意識を取り戻すと、見知らぬ男に囚われていた。監禁現場から脱出し、警察に飛び込んだはいいが、事件までの数日間の記憶を失っているアビーの証言をだれも信じない。消えた記憶をたどるうち、アビーは会社をやめ、ボーイフレンドのテリーとも別れていた。それよりも不可解なのは、面識のないジョーという女性とルームシェアを始め、アビーの私物がすでにその部屋に移されていたことだった……

はらはらどきどきの展開で、前の晩に前半を読み終え、本会開催前にあと100ページ弱というところまで読んで、うん、なかなか面白いと好印象を持っていたのですが、驚愕のラストに言葉を失いました。面白いと言い切っていいのだろうか。そんなもやもや感を抱きながら読書部屋へ。

司会はシンジケートのサイトでは“ふみー”でおなじみ、《ふみ〜、不思議な小説を読んで頭が、ふ、沸騰しそうだよ〜 略して3F》の連載を担当しておられる挟名紅治氏。仲間うちでは「ふみ〜の人」と呼んでいた挟名氏は、穏やかな好青年でした。読書会メンバーの発言をうまくさばき、途中で課題本の解説をはさみ、そうかー、読書会ってこんな感じで進むんだなと納得した次第です。

自己紹介をかねた感想披露の先頭を切ったのは、福岡読書会のスタッフをされている男性。とても面白く読めた、というまっすぐなコメントを聞いたとき、ひそかに(ああ、わたしの読書の目はすっかり濁ってしまった)と思っておりました。本を読む仕事をするようになり、ミステリが好きで読んでいたはずが、ミステリを売る側の目であら探しをしているのではないかと。せめて自分で楽しんで読む本は、売れる・売れないではなく、面白い・面白くないという目をとりもどそうという気づきをあたえてくださった福岡読書会の雑食さん、ありがとうございました。

そしてもうひとつ学んだこと。本は足で探せ。今回課題図書となったニッキ・フレンチの既訳書はアマゾンでも一部買えますが、都心の大規模書店で全部揃っていたとのこと。座業の翻訳者はついつい“ぽちっとな”で買ってしまうけど、まちの本屋さんはまだまだ在庫してますぜ、旦那。今日も地元書店をぶらついていたら、翻訳学校の先輩の新しい訳書が平積みになってました。がんばれ先輩(俺の本も1冊あったぜ)。

読書会の後はフランスミステリのお部屋へ。終了間際だったようで、10分程度お話を聞き、レジュメをいただいて帰りました。フランス読みとしては、休憩時間に物販で買ったポール・アルテ(平岡敦氏訳)の『殺す手紙』に平岡さんのサインをいただきたかったのですが、ですが……終了と同時に高野氏・平岡氏のまわりに人だかりができて、「サイン」なんて言える雰囲気ではありませんでした。11時には会場である旅館の玄関が閉まるし終電は迫るしで、後ろ髪ばんばん引かれながら会場を後にしました。

そしてお約束のように道に迷い、たどりついたのが春日駅。なんでやねん。それでも終電には余裕で間に合い、タクシー帰宅したところ……「明日は高尾山に登るから早く帰る」と言ってた家族がいません! わたしとはFBやTwitterで仲良しの《彼ら》と終電を逃す寸前まで飲んでいたとかいないとか(飲んでた)。いっぽう感動さめやらぬわたしは仕事に手をつけたり、『Glee』第2シーズンを観たりと、ついに徹夜です。だったら会場に最後までいたってよかったんじゃん。

というわけで、来年(こそ)は迷わず時間どおりに出席し、朝までミステリ話の末席に加わります。よろしくお願い申し上げます。

<了>